merry merry

生活と詩

詩 無題

とおい おそらの果てに また 出会えるときが はなたれて とんでいく あなたも わたしも あのひともいつか 草花しずかに揺れ くだかれた胸のゆらぎ 愛のはじまりとふれたぬくもり 初恋のおわる音 風にさらわれ 春や秋と呼ばれ 名もなき日々のうつろいはここに…

詩 熱帯夜

熱帯夜に明ける寝室は密林のめざめ 犀角は星に降られてエウロパの夢をみたから 髪を結ったら生活は繰り返すサヴァイブ 気づかなかったの昼も夜も降り注ぐまなざしに守られて そうして巡りあう今世何を語らおう わたしたちここから地平線を見すえて 2023.8

詩 8月

かつて おとなびた向日葵たちと お構いなしな蝉に任せ かなしくてかなしくて さめざめと泣いたあどけなさ 幼いだれかの余地となり とめどなく 流れ落ちては アスファルトの黒 輝り返され 遠い空へかえっていった 気紛れな天使のくれた鈍色は 喧騒と8月 永遠…

与那国二世が『ばちらぬん』を鑑賞して

与那国二世が『ばちらぬん』を鑑賞して 与那国島出身で現在、大阪をはじめ各地にて民謡を歌っている母親の手伝いをしています。大阪生まれの30代です。 映画『ばちらぬん』を鑑賞して、わたしの周りに居る“どぅなんとぅ”たちと、与那国島のことを文章にしま…

詩 カーニヴァル

洗いたての生成りの木綿をお空にさらしてDub stepの鳴る快晴に願う遠くの雲までたなびき舞い上がれあてのない夜を秘め揺れる日々のかなしみ彷徨いあるく獰猛たちのほとりへ さあ心地よく 湯煎にくぐらせ踊らせる指先と生成りの木綿でカーニヴァルを描いたら…

詩 マボロシ

快さ乗りて 落日 燃ゆと ユメ マボロシ いつか行くふるさとでまた会えたなら この世の戯れ こころからだ 記号のような記憶もぜんぶはらはらとおちるなみだ 砂糖菓子のように紅染まる唇から 滑り出たことば 嬉々 溌溂としてイルミネーションにもなる掠るよう…

詩 春風

荒馬を従えて春風のようなやさしさで うつろう身もこころも奪って連れ去ってあなたの健全なたましいで

詩 夕刻

夕刻の凪きょうのひの暮れにあなたがしとどに濡れる はずがないいつか出逢う さだめを待ちおどけながらも 口づけた昨日と手繰り寄せた 片側を産み落とされた さみしさを手を振った わびしさをこうべを垂れた 瞬間を祈り捧げた夜半を 抱き いきるあなたは

詩 トゥナイト

今夜は 蛮勇でも みじめでも おやすみなさい た易く 流れ星に乗れるように 遠いあこがれ 枕に敷いて あかりを消したら おやすみなさい

詩 虹

おとなになり極彩色の地はだれかへの道を無限大に示しあなたにも 出逢ったのにそれなのに いっこうに慣れません折に触れてわきおこる喜びに かなしみに さみしさに うれしさに いまでも わたしは

詩 ミッドナイト・ヴァケーション

小指絡めて逃げだしましょう 喧騒から 夜明けは来ないからこのままふたりはミッドナイト・ヴァケーション

詩 寝床

そっと 撫でるようにあなたの寝床に滑り込む何か欲しいわけでも足りないわけでもなく ただ温度ともつかぬ 寝息も立てず聞こえる 生活のリズムの中秩序の保たれたやさしさにからだごと溶け込むために朝が来て 街が目覚める前にあなたの寝床に滑り込む

詩 駆ける

数多の夜を越え 夜を越え越えて 野を駆け 足早に 踏み締め 草木の 朝夕の月夜の 風の如く 星の如く 活きる その身のうつくしさ知らぬ駄馬と呼ばれる者たちよ幾多の夢を追い越えて辿り着くことすら忘れ求めることすら薄れ充ちたりることからも逃れ ふと立ち止…

詩 願い

この ことばたちは届かずに 体躯を浸し深く沈み 降り積もる けれども ほんとうにたいせつなおもいは 微かな音を伴って 震えを以て まるで 生まれたその日のような 無垢をはらみながら たったひとことだけでいい 湧きあがりながらも ため息のように 吐く その…

詩 郷愁

ほんの僅かな 日々の隙間に だれかと惹かれあう ふたつの星がひきあうように たがいの灯に誘いだされ おそれつ とまどいつ ふれればたちまち雪崩れ込む 孤独なたましいたち 無邪気な子どものようにふるまう きょうの昼間と 沁みだすような愛に溺れる あすの…

詩 ある恋

日が昇るとともにからだの細胞のすべてがめざめ かすかに沸き立つだれにも気づかれない場所でひそやかに たおやかに祈りを込めながら そうして この恋も生まれ変わり消え去ってはまた 落ちてしまうあなたの持つ 不変の熱に こんな瞬間を待ち望むためにあのと…

詩 夕食

孤独がたまに 溢れだす夕食の隙間にお茶碗の端からぽろぽろとこぼれて食卓を転がって足下へするりとおちていくあめの降るように しずかに 堰を切ったように ひそかに孤独が急に 顔を出す陽に灼けたうなじを ぼんやりとそこへ 触れたかったこと 知りいつかの…

詩 わたしたちのすがた

誰しもが自身のみすがたでしか 在られなく そのうえで 叡智に出逢い進化し 深化する はだかのいのちは海原のように まるで 篝火のうち震え燃える粉塵の一抹のように はてしなく矮小でかぎりなく雄大なたましいをもつ たったひとつのわたしが対峙したたったひ…

詩 アイリスは夢見る

アイリスは夢見る真昼間の しずかな庭で アイリスはうた 歌う午後を照らす陽気を感じて アイリスは仰ぎ見る明けたばかりの頃に目覚めて アイリスはうたた寝るいとしい薫りを思い出して アイリスは恋をする震える胸はかすかに波立ち あした 逢いたい後ろ姿を…

詩 夜明けのキッチン

夜明けのキッチンでオレンジ色の灯りの下星に願いを乞う暇もなく忙しない夜が明ける 煙を燻らすとひとりでに明けていく空がいつくしみ深い まなざしを湛えあふれるはずのない気持ちが湧き出る泉のように 夜明けのキッチンで冷えた青に染まる 尾根とオレンジ…